研修と勉強会のご案内

三重県グループホーム連絡協議会 事例報告

2007年2月15日
発表者 グループホーム レモンの里 中村真智子

レモンの里の取り組み 音楽を暮らしに生かして

  1. 自己紹介
  2. レモンの里の紹介
    レモンの里は、津市の住宅地と、農地の境界線上に位置します。
    西を見れば、御在所岳などの鈴鹿山系・布引山の風力発電などが望め、東は住宅地となっており、隣接して心身クリニックなどがあり、大きなスーパーも近くにあります。
    ホームは約200坪のガーデンがあり、リンゴ・サクランボ・アンズや柑橘類の果樹があり、季節の花と果実の収穫が楽しめます。
  3. 取り組みの紹介
    ☆ 『健康』と『オープン』を基本理念に、お年寄りの体力づくりと、心身ともにオープンな暮らしを目指しています。体力づくりには、穏やかで、開放的な環境が大切と考えています。
    ☆ 来客・ボランティアの方々との交流・他のホーム・障害者の方々との交流も大切に しています。
    ☆ ルールよりマナーでの日常生活。施設や職員が決め事をするのではなく、マナーを大切にする習慣で、穏やかな暮らしをしていただく。
    ☆ 日課(スケジュール)を決めない運営。 とくに日課は定めていません。起床・就寝時刻も自由で、朝食は各自起床時刻に合わせており、朝食が終わるとすぐに10時のおやつという方もみえます。 それぞれの方々が、おしゃべりをしたり、職員やボランティアの方々と外出したり、気ままに暮らしています。
    ☆ 沖縄・北海道・中国(旧満州)など、個人の希望に合わせて旅行をします。 ご家族・ボランティア・職員が付き添います。 宿泊が困難な方は、日帰り旅行や歌舞伎見物などをします。
    ☆ オムツはずしオムツはずしは、多くのホームで取り組んでおられることですが、レモンの里でも積極的に取り組んでいます。当初3名の方がリハパン使用でしたが、現在は着用がありません。 また3名の方がポータブルトイレを利用していましたが、現在はゼロになっています。 ☆ 読経(浄土真宗高田派)夜のお勤めとして、毎夜就寝前に7名が参加されています。 2年ほど前、お年寄りの会話にお勤めの話が出たので、即日実行し、休み無く続いています。お勤めをすることにより、就寝前の落ち着きが見られ、徘徊が減少しました。就寝時間も定まりました。また、大きな声で読経することで、健康面でも役立っています。
    ☆ ユニークな体操や、自発的参加による日常生活作業などを活用し、洗濯・食事作り・掃除など協働を中心にした工夫をしています。
    ☆ ガーデンには、リンゴ・サクランボ・アンズ・柑橘類などの果樹があり、収穫して食用にしたり、ジャムなどに加工しています。
    ☆ 障害者(知的・身体・精神)各1名の社会参加(定員外の職員として)を受け入れています。
    ☆ テレビをつけない・・・掃除機を使わない・・・静かな環境にし、入居者さん同士の会話につなげています。
    ☆ 植木・観葉植物・生花などを沢山室内に置いています。

基本的には『家でいるのと同じような暮らし』の実現を目指しています。

音楽(歌)による、ケアの取り組み。

レモンの里では、音楽(歌)を生活リハビリの中心にしています。

成果・効果

  1. 健康づくり
  2. 会話の機会増加
  3. 積極性の向上(主役体験)
  4. 交流の機会増加(地域・他のホーム・他の施設など)
  5. 知的生活の向上
  6. 回想法と未来法
  7. 声の大きさの変化(聞く力)

経 緯
オープン当初は、入居者さんの性格・生活歴・嗜好などが十分理解できていなかった。また、徘徊が多く、その対策に追われる毎日でした。

5ヶ月ほどして、入居者さんが9名になり、職員もそれぞれの方の個性が理解できてきた。

毎日ゲーム・カート゛遊びなどをレクの中心においていましたが、あまり長い時間続かなかった。  
ある日、入居者さん全員が揃ったときに、唱歌を歌い始めたところ、一番気難しい方が、楽しそうに歌いだしました。
この方は、女学校(ミッションスクール)時代に外人教師と一緒にコーラスをやっていました。
最初は職員の手拍子を嫌がっている様子でした。
それで、職員も一緒になって、出来るだけ大きな声で歌うようにしました。

A3用紙に手描きで歌詞カードを作り、小さな輪を作って歌うことにしました。 気候のよい時や、涼しい夜は、ベランダで歌った。・・・近所にも結構聞えたとおもいますが、とくに苦情はありませんでした。

入居者さんも、職員も大きな声で歌っているうちに、ドンドンと声がよくなってきて、歌詞も2番3番4番まで覚えてこられた。

コンサートの経緯
ある日、声楽家のお客様が来られ、入居者さんの歌を聞き、『上手ですね』と言われた。・・(本心はお世辞だったと思うが)
それで、突然『それじゃコンサートをしよう!!』ということになりました。

コンサートは、『どうせやるなら正式のホールを使おう』ということで、津市のリージョンプラザお城ホールを使うことにしました。当初は、『出演者より、観客のほうが少なくても構わない』、ということで計画しました。
また、『自分たちだけが楽しめばよい』、ということで、『ひとりよがり レモンの里コンサート』と名づけました。

コンサートを実行することを決定してから、急に入居者さんの間で、コンサート気分が盛り上がってきました。
『何時するの?』 『会場は文化会館やろ』 『うまいこと歌えるやろか?』などと言っているが、本心は“本物の舞台で歌ってみたい”という気持ちになっていました。

”本番が近づくと、チラシ・ポスターを見てもらい、また、ケーブルテレビ・新聞の事前取材も入り、だんだん熱が入ってきました。

曲目は、歌いやすく、失敗の少ない童謡・唱歌を選定しました。
そのうちに、全員が斉唱するだけでは『芸が無い』と、各人がソロのパートを持つことにしました。
このために、各人の持ち歌を決めました。
それぞれの方にふさわしい選曲をしました。

自分の持ち歌が決まると、その方がソロで歌えるように工夫しました。
当日の歌詞カードは、個人別に作り、ソロ部分は他の方が歌わないように指示を書き込みました。

ソロの部分があると、熱心さが変わってきました。自分の歌うパートは一生懸命に練習されます。
声の質も変わってきました。澄んだ声が出るようになってきました。

本番真近になって、伴奏の方とピアノの音合わせになりました。 
普段は、伴奏を考えずに練習していたので、始めのうちはピアノと全然合わせられません。 ピアノ伴奏を止めようかという気にさえなっていました。本番まであと、2〜3日に迫ってきた頃になって、やっとピアノに乗れるようになりました。

当日は、朝早くから、全員が化粧・着る服・髪などを整え、そわそわした気分でした。 職員も手分けして、準備に掛かりました。

ご家族の関心も高く、全員のご家族が会場に足を運んでくださいました。

当日は取材もあり、開演前はどうなるのだろうと心配しましたが、開幕直前まで不穏だった方が、開幕と同時にシャンとし、立派に歌っていただけました。

ソロのパートになると、出遅れなどもありましたが、全員が立派に歌い終わりました。

コンサートの成果

  1. ご家族の積極的参加 (実名報道)(顔写真の公表)(花束)(楽屋での交流)
  2. ボランティア
    多くの方々の出入りがあり、地域交流にもなりました。
    ホームの活動を理解し、認知症の方々に温かい心で接していただけました。
  3. 本人
    おしゃれ・整髪・衣服・姿勢など、目標に向かって努力。
    歌唱力の向上。
    主役体験による、自信の回復。

コンサートが終わって帰園すると同時に『来年はいつやるの?』『楽しかったね』など、スタッフを驚かすような発言があり、嬉しさがこみ上げてきました。
認知症の方が、今までに経験の無い舞台に立っても、混乱せずに歌い終えたことに感動しました。

コンサート後の流れ

  1. 次のコンサートに向けて、新しい歌を覚えようという機運になりました。
    沖縄の歌『涙そうそう』『花』に取り組んだ。 スタッフも一緒になって取り組み、『かっこよく歌おう』ということで、外国の歌『ローレライ』『きよしこの夜英語バージョン』なども取り組んでいます。
  2. 地域交流
    他のグループホーム、障害者施設などへの出前コンサート・交流コンサート・公園での野外コンサートに発展しました。レモンの里の中だけで歌っているのではなく、他のホームなどへ出掛けることで、自分たちの存在感を確かめられるようになりました。
    連合コンサート
    昨年夏、津市内5ホームが合同でコンサートを実施しました。各ホームがそれぞれ練習を積んで、楽しいコンサートになりました。
    松阪市 Kホーム訪問
    約40分間、相互に歌を歌い、交流を深めました。不慣れな場所であったが、混乱は見られませんでした。
    知的障害者施設
    クリスマスの会に招待いただきました。30分間のレモンの里の時間をいただき、出前コンサートを行いました。 障害者とそのご家族と共に、楽しい時間を過ごさせていただきました。
    野外コンサート
    津中部サイエンスシティの公園でミニコンサート(勝手に歌っているだけではあったが)、保育園児たちが集まってきて、ドングリころころなどを一緒に歌いました。入居者さんは、園児に優しい声をかけ、楽しんでいました。

音楽療法としての効果について

  1. 健康づくり
    大きな声での発声・人前で歌ったりする緊張感などで、心身面での健康が図れる。
  2. 会話の機会
    歌にまつわる話の紹介・歌い方の議論、楽譜の見方など歌に関する事柄を話し合うことにより、入居者さん同士の会話が始まる。
  3. 積極性
    自分たちの歌を聞いてもらえる。新しい歌を覚えようとする気持ちが暮らしの中の積極性につながります。
  4. 交流
    出前コンサート・連合コンサート・野外コンサートを通じて、交流が出来る。
  5. 知的生活
    認知症だから覚えられない・忘れてしまう・・・と考えていたのが、新しい歌や、ものごとを覚えられる。自分達なりの歌い方と、楽譜どおりの歌い方などを、学ぶことが出来る。外国の歌を英語で歌う。歌にまつわるエピソードなどを話しながら歌となじんでゆく。
  6. 回想法 未来法
    歌と共に人生を振り返る。自分達の時代や時代背景を振り返る機会になっている。新しい歌を歌う。英語で歌うことで、余生に対し、真剣に向かい合って生きようとする。自分の希望をストレ−トに表現する。
    次のコンサート・他施設訪問が待ち遠しい。
  7. 声の変化
    小さな声で会話できるようになった。自分達で歌うことから、お互いの歌声を聴く必要があり、次第に、耳が研ぎ澄まされるようになってきた。

目指すもの
活力・生活・安らぎ・長寿
人生の先輩としての普通の生活。

応用とアドバイス

☆職員が気軽に歌いはじめる。・・・さあ、はじめましょう・・とい う感じでなく、職員自身が楽しんで歌い始める。          
☆職員が歌詞の持つ意味を理解して、感じたことを入居者さ んと共に語り合う。
☆CDやテレビなどに依存しないで、生の歌声で対応する。          
☆体力差・気力差を認識して、個人対応・個別介護に徹する。          
☆他の人(家族・他の施設の方・ボランティア・来客)と歌う。         
☆入居者さんのうちでリーダーを決める。         
☆歌や生活にちなんだ物品を揃える。         
☆歌をリハビリに取り入れる。歌いながらリハビリを進める。

認知症ケアセミナー

4月13日 
認知症ケアセミナー『有料、主催:プラス福祉学院』が開催され、倉田成文が【レモンの里の介護の現場から】というテーマで1時間半ほど講話をさせていただきました。

講話のレジメを以下に掲載しました。レジメですので詳しくはありませんが、ご参考にしてください。
これらについて、詳しく知りたい。意見を聞いてみたいと思われましたら、遠慮なくご連絡ください。
一緒に考えてみたいと思います。

電話・面談とも無料です。
電話059-229−8433レモンの里 倉田成文へご連絡ください。

認知症ケアセミナー レジメ

2006年4月13日
講座 レジメ
認知症介護についての、正しい答えは無いと考えてください。
人生・考え方・時代背景・素質・人間関係・介護者の資質など100人いれば100通りの解決策があります。

認知症…理解することから介護は始まります。

認知症の特徴…日常生活に支障が出る。自己抑制が出来なくなる。

認知症のつらさ…認知症初期は、自分が呆けてきたことを認識して見えるので、『忘れてしまった』『約束を忘れてしまった…人格を否定されるのではないだろうか』『出来なくなることが多くなる…作れない・完成しない・壊してしまう』

覚えていること
…家族にとっては覚えていてほしいことを忘れる。(せっかくしてあげたのに)
…家族にとっては忘れてほしいことを覚えている。(悪い感情だけが残っている)

認知症の対応(考えてはいけないこと)
△呆けているから何でも忘れる
△呆けているから分からない
△呆けているから最低限でよい

認知症の対応(基本として必要なこと)
◎介護者が犠牲になる覚悟…介護者はいったん自分の願望・欲望を捨てる覚悟をする。
◎周辺(親族・兄弟・近隣)の理解を得る。…そのためには記録が大切です。

介護者と被介護者(本人)の考え
典型:まだ、飯喰っとらん。…食べたことを忘れている。

  • 同じことを何度も言う。
  • 喧嘩していてもすぐ忘れる。
  • トイレの位置を忘れる。
  • 作業が続かない。
  • 怒りっぽくなる。
  • しまい込む。
  • 通帳・印鑑などを隠す。

介護者は常に『なぜ・どうして』ということを考える。
(本人にどうして?何でこんなことをするの?と問い つめてはいけません)

介護を一緒に考えましょう。(ご相談・勉強会のご案内)

介護でお悩みの方…心の持ちようでぐっと楽になれます。

一人で・ご家族だけで悩んでいませんか。 

介護の実例を基に一緒に考えましょう。

レモンの里では、介護のご相談に無料で応じています。 匿名でも結構です。 気軽に声をおかけください。

電話:059−229−8433  担当:倉田・伊藤

12月20日全国グループホーム協会で実践報告をいたしました。

発表内容は次のとおりです。

演題:音楽をくらしと地域交流に活かして
副題:お年寄りが主役となって、コンサートホールの舞台に立ちました。
発表者:グループホーム・レモンの里(三重県)

・・・コンサートの内容・・・

★コンサートホールの、本式の舞台で入居者(お年寄り)が歌を披露。
★曲目は、七つの子・ゆりかごの歌・椰子の実・ふるさと・夏は来ぬ、等の童謡・唱歌。
★斉唱とソロの組合せ。各人がソロのパートを受け持って歌った。
★観客は、ご家族・他施設・関係者と一般の入場者、約300名。
★実施日:2005年9月24日土曜日 午後2時から。
★第1部はお年寄りが約35分間歌い、第2部はご家族・ボランティア・職員で約30分のステージとなった。

発表会とは違い、『一般の方々にも聞いていただこう』、ということで、コンサート形式とした。
ただ、――失敗しても良い・恥をかいても構わない――ということで、『ひとりよがりコンサート』と名づけた。

・・・動機・・・

昨年3月に開園し、以後、毎日歌い続けた。みんなが歌好きで、カラオケに頼らない歌を楽しんできた。入居者の皆さんの考えと、ホームの考えが合致し、斉唱を中心の歌唱を続けてきた。唱歌の雰囲気を活かすために、手拍子を使わずに歌い続けた。スタッフも、本気印で歌い込んだ。これらの事から、入居者さんの声がよく揃ってきた事、それぞれの方が自身の特徴を出してきた事、それと地元の歌手の方が、『老人ホームらしくない』と褒めてくださった事がコンサート実施のきっかけとなりました。

・・・効果・・・

〜感動〜
★高齢になって、初めて舞台に立つということ。
★みんなで楽しめたこと。
★自分が出来たということ。(残存能力の発揮・向上)
★ご家族の感動。(家庭では見られなかった、はつらつとした表情を見ていただいた。)

〜くらしに活かす〜
★準備段階から楽しみが見つけられた。・・・練習・構成・衣装・身だしなみ・化粧等
★BGMを使わずに、生の歌が生活の一部になってきた。
★入居者さんとの間で、手持ち無沙汰になった時や、間を保ちたいとき、バスや乗用車での外出時など、自然発生的に歌が始まり、和やかな雰囲気があふれてくるようになった。
★歌が会話の一部になった。(歌のメロディーに乗せて食事の合図や、スケジュールの伝達が出来る)
★歌により、ひとりでに笑顔が見られるようになった。
★テレビを見る時間が大幅に減った。(ただし、根底として、平素からのコミュニケーションが必要)

〜音楽療法としての効果〜
★未来へのコンサート会場からホームへ帰ってきた途端、『今度は何時(いつ)する期待感の!』と入居者から声が出た。
★健康:声を出して歌う。また、人に聞いてもらうために、大きな声で歌うことが、活力になっている。
★会話:歌が会話のきっかけになったり、話題として活用できるようになった。
★秩序:ソロと斉唱とを分担するなど、秩序を大切にする習慣ができた。

・・・地域との交流・・・
★他の施設(グループホーム・特養・デイ・児童施設)などの方々が、観客として来てくださった。また、他の施設から、催しの招待をいただくようになった。
★第2部では、ご家族・施設・個人の方々が舞台に立ち、ステージでの交流が出来た。
★新聞・CATVなどで、事前PRや、成果の報道をしていただく事ができ、地域の方々に、グループホームの理解度が高まった。

・・・ご家族との関係・・・
★ご家族の参加をいただけたこと、ご家族が報道に対して好意的であったこと。
一般的には、認知症という病気なのだから、実名が出る事・顔写真を出す事ははばかられるのですが、全てのご家族が報道をご了解いただけた。

・・・留意したこと・・・
★職員には、『遊び感覚でやろう』『失敗しても構わない』『舞台でお年寄りが不穏になることもある』『周到な計画は逆に足を引っ張る事がある。だから、臨機応変で対処しよう』という働きかけをした。
★報道各社に働きかけて、事前報道・成果の報道をしていただいた。
★会場は、入退場自由として、身体の不自由な方が、気軽に見ていただける環境を作った。

・・・最後に・・・
レモンの里では、コンサート以外にも、ふるさと訪問・遠距離旅行・食事内容の向上などに取り組み、また、鍵をかけない工夫、テレビ・BGMを使わない工夫、入居者・職員の個性を大切にした介護の工夫に、力を入れています。

このページの上へ